一見普通の住宅に見える建物、そこには秋葉原moe farreの看板と黒いボードにカラフルなポスカで書かれた公演内容が掲示されていた。
ここだ、不安な気持ちを胸にぼくはおそるおそる暗く狭い階段を下った。
扉を開けると暗い通路、入ってすぐにカウンター、スタッフが気怠けに座っている。
これがライブ会場なのか?前のヲタクに続いて進む。
無料イベント(1ドリンク500円)
飲み物だけ飲まずに我慢すればただでアイドルに会える、なんて良心的なイベントなんだ。
そう思っていたぼくは500円を支払って会場に入った。
会場ではすでにリハーサルが行われていた。
歌っているのか、マイクや音響のテストをしているのか、それとも振り付けの練習をしているのかわからない。
当時はとてもレベルが低かった。不意打ちのラブリーキスである。
フロアではアイドルがたこ焼きをホットプレートで焼いて配っていた。
フライヤーを配ってヲタクと話しているアイドルもいた。
会場で1人佇んでいたぼくに話しかけてくれた百花繚乱のメンバー
アイドルに話しかけられたと言う感動と共に、サイン入りフライヤーを大切に鞄へしまった。
しばらくするとリハーサルを終えたベボガメンバーもたこ焼きを食べにやってきた。
ぼくの目当てことのぺろりんは人気が出る前ではあったが、その対バンではファンが多い方だった。
話しかけたいと思いつつも、ピンチケが剥がれない。
ピンチケ「え、かわいい、ハーフ?」
ぺろりん 「ちがうよ」
そんな会話でも緊張もせずにを話すヲタクが当時のぼくにはプロのヲタクのように映った。
会話を終えたぺろりんがぼくにも気をかけてくれた。
ぺろりん「あっちでたこ焼き焼いてるみたいだから食べてってね」
颯爽とどっかへ行くぺろりん 。その何ごとにも縛られず自由奔放な姿はまるで天女のようだった。
感激して立ち止まっていたぼくに眼帯を付けたアイドルが話しかけてきた。
ベボガのリーダーここたん(水沢心愛)である。
こ「私、角膜炎なの。かわいそうじゃない!かわいそうと言えば、もらったたこ焼きにたこ入ってなかったの。
本当に私かわいそうだよね。君はどのグループ見にきたの?あ、ライブ観ないでたこ焼きだけ食べて帰るとかありえないからね。え、ベボガ見にきたの?初めてなの!誰推?あ〜ぺろりんかぁ。ちなみに私のTwitterフォローしてる?してないの?!はい、今携帯出してフォローして。今ここで。iPadなんだすごいね。はい、じゃあ後でフォロー返してあげるからリプしてね。」
後にも先にも、こんな剣幕で話しかけてきた初見のアイドルはここたんだけである。
続く
フライヤー:いわゆるチラシ。グループ名、メンバーの写真、TwitterのID、次の大きなライブの情報が書いてある。簡単なサインが書いてあったりもしり
ピンチケ(ピンクチケット:マナーの悪い若いヲタク。昔AKBの公演の学割チケットがピンク色で、マナーの悪いヲタクがみんなピンクチケットだったことが由来らしい)