地下アイドルヲタクデビュー その4(完)
地下アイドルのイベントでは欠かせないものがある。
ライブの後の特典会である。
ぺろりんのイラストでもよく題材になる握手会、チェキ会。
ぺろりんのブログことぺろりん図書館を熟読し、ぼくは特典会に挑んだ。
ライブ終了後、会場が慌ただしくなる。なんでライブ終わったのに人が増えるんだ。
当時のぼくはわからないことだらけだった。
その名の通り、すべての公演が終わった後、ステージや客席、通路などを使って複数のグループが特典会を始める。対バンの中でも人気のないグループは通路だったり、人気のあるグループはステージを使わせてもらえたりとなんとなく分けられている。
当時のベースボールガールズは、この対バンの中ではトリを務める規模ではあったのでステージ上で特典会だった。
当時のレギュは1000円で2ショチェキサイン
2ショットチェキを撮った後にサインを書いてもらえる。サインを書いている間は2人で話すことができる。
はずだった。当時はレギュが特殊で、チェキを撮った後に名前を聞かれて一度特典会が終わる。チェキを撮る人がいなくなったら名前を呼ばれてサインに移るという形式であった。
最初からどこに並べばいいのかわからない状態だった。
ぺろ列はそこだよ。ボサッと突っ立ってんじゃねえよと言わんばかりの怒声を上げるヲタク。
本当に怖かった。おまいつだった古参なので、後に会うことになるのだが、結局最後まで話すことはなかった。
新規に優しいヲタクになろうと決心した瞬間だった。あの時の経験のおかげで黄組の黄金期、メリー率いるでんぱ界隈だったり、いろいろなヲタクと仲良くなれたのだが。一生忘れない。
いろいろありながらもぺろりん列に並ぶことができた。
当時のぼくにはトラウマがあった。以前ももクロの手売り会(ももクロは接触イベントは皆無なのだが珍しく開催された)に参加した際、ぼくはアイドルと話してもいいということを知らず、無言で見つめていたのだ。あの時の困った表情のしおりんをぼくは忘れることはないだろう。れにちゃんは笑顔だった。
ともかく、なんとしても話すんだと意気込んでいた。ブログやTwitterからは得られない情報を会話の中から引き出すんだと。だが、現実は甘くなかった。
チェキを撮って名前を聞かれる。想定外だった。
かと言ってTwitterのハンドルネームも恥ずかしい。
捻り出した答えがやーないだった。
名前を聞かれたことで話すタイミングを失ったぼくに追い討ちがかかる。
入場特典の写メである。
全く用意していなかったので、言われて急いでiPadを出す。1枚自撮りをしてくれるとのこと。ブログやTwitterでは得られない自分だけの写メが手に入った瞬間である。
iPadで写真を撮りなれていないためか、写りが悪いと言ってもう一枚撮りだす。会場内の撮影禁止を遵守するコンプライアンスの権化こと、ももクロのヲタクには信じられない自由な世界だった。
初めてのサインは特典会初心者の王道パターンだった。
名前の由来、ペンライト振ってくれてありがとう、普段どこの現場いってるの?
当たり障りのない会話
ただ「また来てね」という約束は、とても強力な約束だった。
チェキを財布にしまい、夜の秋葉原をスキップしかねない足取りで帰った。
興奮冷め止むことのないまま帰宅。ブログ、SNSのチェック。
これはハマってしまう。もう行かないようにしようと固く決心するのであった。